渋谷の片隅で12インチシングルばかり扱う中古レコード店を長年やっていると、トーゼンですが様々なタイプの人にご来店いただきます。
昔からレコードを愛してきたベテランのディガーもいれば、最近になってアナログレコードに興味を持ち始めた若い世代の子たちも増えてきました。
このブログでも度々書いていますがそういった若いお客さんやレコード歴がそんなに長くないお客さんとレコードのコトを語る時に少なからずナンらかのギャップを感じるコトが時々あるんですよね。
で今回は、この記事のタイトルにもなっている、
レコードの「音圧」ってコトについてのハナシです。
アナログレコードを販売しているとその曲のアピール・ポイントとしてフツーに「音圧」っていうワードを使うシーンが多々あるんですよね。
特に当店は、12インチシングルだけを販売するレコード店です…ソレこそ「音圧」まみれのレコード店なワケです(笑)
ある日、店内で試聴しているお客さんと「結構、この盤は音圧ありますからね〜」ナンてハナシしていると「音圧って何ですか?」って20代の若いお客さんに訊かれました。
当店では頻繁に耳にするこの「音圧」っていうワードだけど、よく考えてみれば、はじめてレコードを触る人にとって「音圧」というのは相当に謎めいたコトバのようです。
音が圧? 圧力? 音量とは違うの?
どうして12インチは音圧が高いと言われているの?
そう訊かれてみると、オイラも改めて説明のむずかしさに気づいたんですよね。
長年の感覚として理解しているものホド、言葉にすると意外とカタチにならないコトってありますよね。
でもその日、店で起きた出来事がキッカケで、「音圧ってこういうコトか」と誰にでも伝えられるようなヒントをもらった気がして、それを今日は文章にしてみたいと思います。
■ スマホ試聴の「便利さ」と「限界」の間にあるもの
当店では、レコードの商品札にQRコードを付けていて、ソレをお客さんがスマホでスキャンすると、その場でその曲が試聴できる仕組みになっています。
これがとにかく便利で、初めて触れるアーティストでも曲の雰囲気をスグにその場で確認できるというメリットがあります。
特に最近の若い人は、スマホを取り出すのも、イヤホンをつけるのも当たり前の動作みたいにサッと慣れていて、気になるレコードがあれば、自然にQRコードでの試聴を利用していただける様になりました。
ただ、ココにひとつオイラがずっと気になっているコトがあるんですよね。
スマホやイヤホンで聴いたその曲は、あくまで「曲の紹介としての音」 なんですよね。
メロディもテンポも歌声も、確かに確認できるのですが、でもレコードの中に記録されている「音の力」までは伝わらないんですよね。
空気が震える感じ。
スピーカーの前に立ったときに胸の奥を「ドンっ!ドンっ!」ノックされるような衝撃。
音が部屋の空間を満たし、包むように広がっていくあの感覚。
そういった「音がそこに存在する感触」はスマホやイヤホンを通した試聴では、どうしたって伝わらないんですよね。
なのでオイラは、QRコードで曲を確認したお客さんが少し悩んでいそうな雰囲気をカンジた時に
「もしよかったら、実際に店のスピーカーで聴いてみます?」って声がけしているんですよね。
たいていのお客さんは少し遠慮がちだけど
「あ、じゃあ…お願いしてもイイですか?」と言うんだけど、その後の反応は大抵ホトンド同じなんですよね。
針をレコード盤に落とした瞬間の「ドッ!って出る音の飛び出し」に驚いて、オイラの方を見るんですよね。
「うわっ…ナンだコレ……音、全然違いますね!」って。
このリアクションを見る瞬間、12インチシングル屋としてはイチバン嬉しいときでもあります(笑)
■ 「音圧って何ですか?」と訊かれた日
先に書いた20代のお客さんが店に来たのは、週末のお昼過ぎでした。
HipHop/R&Bの棚を見たり、Discoの棚を見たり、ドコか何を探していいかわからないケドなんだかワクワクしているような雰囲気の人でした。
オイラは近くにあったテキトーなDiscoのレコードをナニゲにターンテーブルに乗せてプレイしたんですよね。
ビートが太く、シンセベースが空気を震わせるようなそのサウンドをはじめて聴いたようで、彼はその音を聴きながら「なんか、音が太いですね…」とポツリと言った。
そこでオイラは、いつものように
「あぁ、12インチは音圧ありますからね〜」って軽く返したんですよね。
すると、その子は真面目な顔でこう訊いてきた。
「あの…音圧って、ナンですか?」
たぶん彼にとっては、“音が太い理由”を知りたかったんだと思うんですよね。
でもこの質問は、実はレコードに慣れた人にとっても答えるのが難しいんですよね。
「音量じゃないんですよね」
「音の迫力っていうか…」
「ガッ!っと前に出てくるカンジっていうか…」
言葉にするとどこか抽象的になるし、上手く伝わらない気がしてしまう。
だからオイラは彼にこう言いました。
「説明するより、実際に聴いてみたほうが絶対解ると思いますのでちょっとイロイロ、レコードをかけてみましょうか?」
■ 針を落とした瞬間に、世界が変わる
オイラが選んだのは、コレ
Roger / Bridging The Gap (LP)

Roger / (Everybody) Get Up (12" Single)
LPだと低音や振幅の制限で控えめになりガチなんだけど、12インチだと太さとグルーヴが段違いに出る。
彼が見つめる中、ターンテーブルの針をそっと落とす。
すると──
ドンッ……!
店の床がわずかに震えるような低音が広がった。
キックの輪郭がくっきりと立ち上がり、そのすぐ後ろを追いかけるようにベースが塊となって押し寄せる。
カンパツを入れず奏でられるギターリフが空間に鳴り響く。
空気の密度が一瞬で変わる。
彼は、「おおぉっ!」っていうカンジでそのままスピーカーを見つめていました。
そして、ゆっくりとオイラの方を向いて言った。
「…スゴい、ナンかズンズンきますね〜」
アルバムも12インチシングルも曲そのものは同じなんですよね。
でも、同じ曲でも音圧が高いサウンドだと「曲の姿」が変わる。
音が“そこにいる”。
音が生きてる。
音が空気を押している。
コレが、音圧の力なんだでしょうね。
■ 音が大きいんじゃない。音が濃いんだ。
ココからは少し専門的な話になるけれど、できるだけやわかりやすく書いてみようと思います。
まず、音圧というのは音量とは違う。
音量というのは、
ボリュームのつまみで調整できる「数値としての大きさ」だ。
でもアナログレコードでいうトコロの音圧は違う。
音圧とは、音の密度・音の濃さ・空気の押し出し力 のような、存在感の質に関わるモノだと思います。
たとえば同じ音量で音楽を流していても、音圧が高い音は前に飛び出してくるように聴こえます。
反対に音圧が低い音は、音量をいくら上げてもどこか薄っぺらい。
料理に例えると、同じスープでも薄味と濃厚では存在感がまったく違いますよね。
音圧って、あの「濃厚さ」に近いものだと思います。
■ LPと12インチの差は、「部屋の広さ」の違いみたいなもの
では、どうして12インチは音圧が高いと言われるのか?
その理由はとてもシンプルで、
12インチはレコードの溝を広々と使えるからなんですよね。
LPはそのフォーマットゆえ盤面に4〜6曲詰め込まないといけない。
すると溝は細く、浅く、繊細に刻まなければならないワケです。
必然的に低音は控えめにせざるを得ないし、音の波も大きく刻めない。
言うならば、
家具だらけのワンルームでダンスするみたいなもの。
自由度が少なくなるんですよね。
でも12インチは1面に1曲。
もう、使い放題。
まるで広い部屋を1人で使うような贅沢さ…ん〜例え方が判りにくいかな〜(笑)
その結果として、
低音は深く刻めるし、
音の波も大きくできるし、
ダイナミクス(音の強弱)もそのまま保持できる。
つまり──
音が濃く、躍動感のあるサウンドをレコードに刻むコトが出来る。
これが、12インチシングルの音圧が高い理由となります。
■ イヤホン世代が音圧を知らないのは、単に未体験だから
最近のお客さんと話していると、よく感じるコトがある。
それは、
イヤホン中心で音楽を聴いている世代は“音が空気を揺らす感覚”を知らないまま来店している、というコトなんですよね。
イヤホンって耳の穴の中で直接鳴るから、音の“密度”はわかるけど、音の“物理的な圧力”は伝わらない。
胸の奥が軽く震えるカンジとか、
空気がドンと押し広がる瞬間とか、
ああいう音とカラダの接点みたいな感覚はスピーカーでしか味わえないと思うんですよ。
だからこそ、12インチシングルをスピーカーで鳴らしたときの衝撃はイヤホン世代の若者ホド大きいような気がします。
そしてその時の反応を見るたびに、「ん〜音圧の魅力って、やっぱり最高だな…」としみじみ思うんですよね。
■ 音圧を感じると、音楽の姿が変わるかも…
音圧のある音を聴くというのは、ただ「音が大きくなる」というコトではなくって
音が近づく。
音が立ち上がる。
音がカラダの周りを包み込む。
音が空間に実在する。
その瞬間、音楽は「データ」ではなく、「存在」になるんじゃないかな。
そういった状況ってコレまでに何度も見てきたし、自分自身も最初に12インチシングルの音圧を体験した時に、全身でその変化を感じたんですよね。
音楽って、ただ耳で聴くものじゃないんだなぁ〜って。
身体全体でその音楽を受け取る楽しみってあるんだなぁて思ったんですよね。
■ 店頭での試聴は、ぜひ遠慮なく言ってほしい
当店では、QRコード試聴と店内のスピーカーでの試聴の両方ができるけど、音圧をダイレクトに感じたいなら、やっぱりスピーカーですよ。
全然、遠慮する必要なんてないですよ。
むしろ、試聴してもらうコトで「本当にそのレコードを好きになれるかどうか」が決まるんじゃないかなって思っています。
レコードを買うというのは、単に曲を買うというコトじゃななくって音を家に連れて帰るコト的な意味もあると思うんですよね。
なので、その音がどんな姿をしているのかは、ちゃんと確かめてほしいんですよ。
12インチシングルの音圧を体験してはじめて、「レコードを聴く理由」がハッキリと見えてくるコトもあるんじゃないかなって思うワケであります。
■ 音圧とは、言葉ではなく体験かも
この記事を書きながら、オイラ自身も改めて考えてみました。
音圧とは…
音の密度であり、
空気の振動であり、
身体の感覚であり、
そして──音楽の存在そのものなんだと。
あの日の若いお客さんがスピーカーから飛び出してきた12インチシングルの音を浴びて驚いた表情をした瞬間、オイラは
「あぁ、こうやって音圧の世界に入っていくんだな」って思ったんですよね。
もしこの記事を読んで、少しでも「音圧」に興味を持ってくれたなら、ゼヒ12インチシングルで曲を聴いて欲しい。
今までと少し違った音楽の楽しみ方が出来るかもしれませんよ。
今回、レコードでいうトコロの「音圧」をテーマに記事にしてみたのですが、かなり難しかったです。
ブログ記事で紹介したように同じ曲を聴き比べるを「音圧」って一体ナンなのかっていうのはカンジることで結構すぐに理解出来るコトなのですが文章とか比喩でソレを説明するのは、相当判りにくいですね。
レコードの盤面をワンルームか広い部屋かってかなりムリな例えですが(笑)
はじめにウィキペディアで音圧について調べたのですそこでが学術的に「音圧」が解説されていて我々がいうレコードの音圧とは違うんですよね。
タブン、アナログレコードの音圧って豊かなダイナミックレンジのコトを主観的な感覚でカンジているのかもしれませんね。
まぁ〜でも音圧っていうのは12インチシングルでは、メチャ重要なコトですからね〜もう12インチシングルの良さそのものっていうカンジでもあるワケです。
ゼヒ、スピーカーで12インチシングルが奏でる音圧をダイレクトにカンジてほしいですね〜。
